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諸外国の経験に学ぶ立憲的改憲・国民投票制度

2017年12月 7日


 先週の憲法審査会は1時間30分とそもそも短い時間のなか、私を含めて発言を申し出た複数の委員の発言の機会が保障されず、一方、他の委員の発言に対する弁解・反論のために自民党中谷委員には発言を許可するなど、必ずしも十全に公正とはいいがたい采配が行われたように感じています。
 憲法審査会長は、自民党の方ですが、だからこそより公正な委員会運営を望みます。
 今日の憲法審査会で自由討議の機会があれば発言しようと思っていたのですが、閉会中審査という手続きで終わってしまいましたので、ここに原稿をアップします。

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 立憲民主党・市民クラブの山尾志桜里です。
 衆議院欧州各国憲法および国民投票制度調査議員団の視察報告を受け、3点申し上げます。

○1点目は「憲法改正は憲法典改正にあらず」のということの確認です。
 今回の最初の視察先イギリスは、いわゆる「憲法典」のない不文憲法の国です。
 不文憲法の国における憲法改正とは何か、デイビース下院行政憲法委員会担当部長が端的に述べています。「憲法典があるわけではないが、憲法(憲法的事項)を変更するときは、議会制定法で行うということだ」
 つまり、憲法改正の議論は「憲法典改正」にあらず、関連法令も含めた広く深い議論をすべきだということが導かれます。憲法の文字を守るか変えるかではなく、憲法の価値をいかに守り強化すべきかという観点で議論すべきです。
 この点、関連法令も含めた実質的意味の憲法改正をイメージする参考例として、フランスの2008年憲法改正があげられます。
 サルコジ大統領の下、バラデュール元首相を委員長とする検討委員会では、「執行権の統制」「議会の強化」「市民のための新たな諸権利」という3部構成で、関連する法制度全体を視野に入れた議論を展開し、77の具体的提案を報告書として提示しました。
 たとえば「執行権の統制」においては大統領の三選禁止が導入され、「議会の強化」においては質疑時間配分における野党の権利の拡大が実現しています。
 これらは、日本の課題とも重なるもので、実質的意味の憲法事項として、本来憲法議論の俎上にあがっても不自然ではありません。それだけ憲法改正議論というのは広く深い議論であって、期限を切って、安易に単発のテーマで終わらせる類のものではないということです。
 
○2点目は自衛権の統制についてです。
 安倍総理は、まさに「2020年施行」と期限を切って、「9条1項2項をそのままに、自衛隊を書き込むだけ」という安易な単発の提案をされています。
 しかし、この安倍改憲提案は、国際的にはどのように受け止められるかベン下院EU離脱委員会委員長が教えてくれました。ベン委員長は視察団に対し「防衛だけではなく、攻撃もできるようになるということか」と疑問を投げかけたのです。
 「自衛隊を書き込むだけで権限や任務は変わらない」といくら安倍総理が答弁しても、国際社会の受け止めは違います。この点、日本の制度を知らないから受け止めが間違っているのだ、ということでは済まされません。実際に、9条2項の「戦力」とは別物としての「自衛隊」が憲法上に抜き身で書き込まれた瞬間、戦力不保持の枠外に表出した「歯止めなき自衛隊」に憲法が太鼓判を押すことになりかねない。ベン委員長の感覚は正しいのです。
 立憲主義を貫徹し、その価値を強化するための「立憲的改憲論」で、むしろ自衛権を含む国家権力を統制し、国民の人権を保障するための憲法議論をすべきです。
とりわけ国家権力が最も先鋭化する自衛権については、権力主導で肥大化させるのではなく、逆に国民の側から統制する議論が不可欠です。立てるべき問いは、「自衛隊を書き込むか否か」ではなく「自衛権をいかに統制するか」です。
 この点、現行憲法で国民意思による自衛権統制が十全になされていれば変える必要はないでしょう。しかし、憲法解釈を覆す安倍総理のもとで、現行憲法9条は、安保法制の成立を止められなかったという事実を直視すべきだと思います。
 権力を抑制する方向で積み上げてきた解釈の鎖を壊す自由な権力者が表れた以上、明文で鎖を巻きなおす必要があるのではないでしょうか。
 そこで、明文上、自衛権に「個別的自衛権」という範囲の歯止めをかけることを検討すべきです。
 国際法上の許容範囲と、わが国独自の主権的判断による自衛権の範囲が必ずしも重なる必要はありません。
 国民意思による主権的判断として、わが国の自衛権は個別的自衛権に限ると国内法の最高法規で宣言することが当然に考えられるはずです。
 その際の自衛権と9条2項「戦力」「交戦権」との関係をどのように整理するかはいくつかの手法が考えられるでしょう。
 さらに、自衛権の統制については、国会・内閣・司法さらには財政面からなどのコントロールを検討すべきで、9条のみならず憲法全体を見通した深い議論が必須です。

○最後に3点目として国民投票について付言します。
 中谷議員が「自衛隊を明記する憲法改正実現のためのアドバイス」を求めた際、キャメロン元首相は「『強い日本は、安全な日本だ』と思わせることができれば、9条改正を実現できるかもしれない」と発言されています。(105P)
 この発言の前後においては、繰り返し「国民投票のプロセスは公平・公正なものでなければならない」とおっしゃっていた中で、国民投票を提起したリーダーの本音が垣間見えたように感じました。
 ここから学ぶべきは、一国のリーダーが国民投票という手段を用いて自らの提案に国民支持を得ようとするとき、「質問文の文言」含めて国民感情に訴えるための様々な手法を試みる誘惑にかられるということです。
 わが国の国民投票法は、その誘惑から独立・公正なプロセスを守りきる仕組みになっているでしょうか。
 「国民投票のルール改善を考え求める会」など国民の側からの議論提起に私たちはもう一度真摯に耳を傾けるべきではないでしょうか。
 たとえば、国民感情に直接ゆさぶりをかけるCM規制について、賛否を呼びかけない意見表明が抜け道になっていないでしょうか。
 国民投票運動に資金提供をする際の登録義務付けや上限規制をかけることを再考すべきではないでしょうか。
 政党の無料意見広告についても、良識に委ねるだけで本当によいのか検討すべきではないでしょうか。
 今回、せっかく予算をかけて視察に行かれ、国民投票の経験をふまえた各国の有識者から繰り返し公正なプロセスの重要性のアドバイスを受けたのですから、ぜひ、こういった議論を真摯にこの場で展開すべきだと思います。